俺の名前は吉田輝和。
今日から私立もえぎの高校に通う27歳だ。



運命のその日、伝説の坂の上の桜舞い散る中で愛を誓い合った二人は永遠に結ばれる…



ん?坂の上に誰かいるぞ・・・


















!!?




おっさん番長日記 1







おっさん番長日記 2


27歳という事もあり、同級生は「さん」付け+敬語で喋ってくるし、正直辛い。友達が出来ないのだ。

そんな中・・・


ビジュアルは置いといて、タメ口なのは正直嬉しい。
一応よろしく、牧原さん。

そしてそこへ・・・


彼の名は矢部卓男。

一見ヤンキー風だがクラスのヤンキーグループに属してない所を見ると、 「高校デビューで調子乗ってみたけどやっぱり不良おっかなかったです」といったところか。

どうやらさっきの牧原さんを狙ってるらしく執拗に彼女の情報を聞いてくる。



すると
「ふふ・・・無駄な努力を」




え?もしかしてお前その顔でイケメンキャラなの?厚かましいにも程があるだろ・・・




こうして、 顔・性格・知力・ユーモア等を総合したクラス内ランクで、最下層のEランクに属する集まりが出来たのです。



おっさん番長日記 3


私立もえぎの高校は未だかつてないピンチを迎えているのです。

突如現れた謎の暴力集団「黒真連合」は極東線沿線の高校を傘下にし、その勢力を強めているのですが、 お坊ちゃんしか居ないもえぎの高校には傘下のお誘いは来ず、極東線沿線の他校から完全に孤立してしまったのです。


そんな中でも一番被害に合うのは格好だけ調子に乗っちゃってるやつで


すっかりカツアゲられ常習らしく名前も覚えられている始末。


「おいお前ら・・・卓男になにしやがった?」




もえ高生が相次いで黒真連合にかつあげ被害に合い、 「吉田さん大人なんだからなんとかしてくださいよ」という、生徒一同からのプッシュで 強制的にスケープゴートもとい、もえぎの高校番長として祭り上げられてしまった輝和が・・・



登場したのです。



おっさん番長日記 4


先日格好よく登場したもののフルボッコにされた怪我がまだ痛いので、あれからずっと引きこもって ネットサーフィンに明け暮れていたのです。

お、もえぎのウォッチャーによると新しいゲーセンがオープンしたのか。
よし、卓男、白鳥、ゲーセン行こうぜ!
エイリアンVSプレデターとかキャディラックスとか3人で出来るやつあるといいな!



古いクイズゲームの問題って時代感じていいよねー等と話してたら


早速ヤンキーに目をつけられ・・・

これはカツアゲされてしまうのか!?と思いきや、こいつら番長からして病弱な弱小陣場高校じゃねえか。


弱いと知るや否やこの態度。



意外と喧嘩慣れした感じでボコボコにする二人。
君ら格下相手だと容赦ないよね・・・まあ僕もだけどね!

病弱とは言えど敵高校の番長を討ち取ったという実績はもえ高内での人気を高めるのに一役買ってくれるだろう。


さて。


どんじりに控えしは!もえ高番長、吉田て・・・




「あなたは重い心臓の病気でお医者さんにも運動を止められてるのよ! 蜂屋君このままじゃ死んじゃうよ!」



あ、そうですか・・・はい、じゃあもう帰ります。



おっさん番長日記 5


白鳥からダブルデートで遊園地に行かないかとのお誘いを受けたのです。

断る理由も無いのでノコノコ行ってみると・・・



これは白鳥と、緑の髪の毛の娘の奪い合いになるのか・・・と思っていたのですが




まさかの牧原さん狙い。
白鳥の凄いがっつきぶりに僕も緑の娘もちょっと引き気味。

いやお似合いっていうかよく似てるし、まあ白鳥が良いんだったら別にいいんだけど・・・



おっさん番長日記 6


月の雫という自作の曲を公開しているサイトの管理人さんとメル友になったのです。

月夜見という厨二臭いHN+時代を感じるMIDI強制演奏とかツッコミどころは色々ありますが、 僕も「ちくわ」という情け無いHNなので人の事は言えません。

聞けば彼女、スキーの帰りに事故にあって恋人を亡くし、自身も大怪我の後遺症で何度も手術を繰り返しているとか。

親身に相談を受けてる間にいつの間にか親しくなっていったのです。



そして・・・
もえ高の番長として黒真連合の傘下の一つである武心女子に出向いた時の事。


「シブイ事で名高いもえ高番長としては女とは戦いたくないし、出来れば話し合いで解決したいな・・・ん?」


「どこかで聞いた事のある曲だ。
そうだ、これは月夜見さんが作った曲なんだ。」




「という事はあの人が・・・」






「・・・・・・・・・」













おっさん番長日記 7


陣場高校に続き武心女子もぶっ潰し、快進撃を続けるもえ高番長、吉田。

その実、喧嘩の一切を部下に任せて自分は命令するだけの口だけ番長との噂が流れているらしい。

そろそろここらで俺の本気を見せてやるか!!という事で 黒真連合、四天王の菊永洋平に喧嘩を売りに行ったのです。




四天王って言ってもあれだろ、一番最初の奴は雑魚って相場が決まってんだよ。
ギニュー特選隊でいうところのグルドあたりだろ。一発でしとめてやんよ!!


と思ってたのですが。




意外と強かったので隠れてました。 だってほらぶきとかもってたし・・・




おっさん番長日記 8


男一人で花火大会に行ったのです。

高校2年にもなって彼女の一人も居ないというのはあれなのですが、 今の僕には極東線沿線の平和という大きな目的があり、女なんかにうつつを抜かす暇なんて無いのです。

精一杯強がりつつ花火を堪能して帰ろうとした時・・・



「お、白鳥。お前も一人だろー。このゴリ男!」



「牧原さん!お前らそうだったの!?いや、良かったね!」

友人に先に彼女を作られたのは妬ましくもあるのですが、不思議と敗北感はありません。幸せにな!!


そして花火大会2日目・・・




「卓男・・・と牧原さん!?」



見てはいけないものを見てしまった気がする・・・



おっさん番長日記 9


白鳥や卓男が夏祭りで牧原さんといちゃついてたわけですが、 全く羨ましくないのです。

何故なら最近仲良くしてくれる女の子が出来たのです!神条芹華さんです!
雨降りの中傘を貸してくれた事が縁で、今では休みごとにデートを繰り返すようになりました。

やーいやーいどうだ、白鳥・卓男。 お前らの牧原さんよか断然美人だぞ!!


ぐうの音も出まい!!はははは!!




ドンッ!!






誰だよ、背中押したやつは・・・



ひっ!ま、牧原さん・・・?



あの豚女・・・白鳥と卓男キープしてるくせに、いっちょ前に嫉妬に狂いやがって・・・



おっさん番長日記 10

陣場・武心女子・房総工業と順調に黒真連合傘下をぶっ潰してきたわけですが、 次のターゲットは石田哲平率いる國志摩高校です。


極悪非道で卑怯という事はまさか僕の彼女の神条さんを人質に取るのか!? と思いましたが別にそんな事はありませんでした。




「黄金の右腕」!? 石田が右手を挙げると大勢の部下が一斉に襲い掛かるとかそういう暗号か!?




と思ったのですが特に何も無く、普通に殴り合いをして普通に倒せました。
ねえねえ、黄金の右腕って結局なんだったの?



おっさん番長日記 11



洸立館高校、女連れのイケメン番長「芝原 勳」に続き




黒岩高校、殺人コンピューター(笑)「岩谷 五郎」を撃破し、 残すはラスボス番長「剛田 竜司」ただ一人となったのです。



剛田の居る、古宿の奥へ奥へと進んでゆき・・・路地を抜けるとそこは






魔界でした。



おっさん番長日記 12

うおー!



どうだ見たか!俺の必殺「ぐるぐる回して眼を回させる」技!


こうして黒真連合リーダー剛田は、もえぎの高校番長・吉田輝和にぐるぐる回され、 黒真連合は崩壊したのだった。




お!お前ら出迎えてくれてんのか!ていうか何しに来たんだよ!来るなら一緒に戦えよバカ!!




あ・・・いや・・・あの、尻触るの止めてもらっていいですかね・・・?




極東線沿線を血に染めた黒真連合は番長と仲間達によって、 その短い歴史に終止符を打ち、極東線沿線は昔どおりの活気を取り戻した。
ただただ穏やかで、心地よい日々が続いてゆく。






――そして時は経ち・・・



あれ・・・みんな随分騒がしいけど・・・なにかあったのかな。





おっさん番長日記 13


最近頻繁に起こる学校荒らし。
盗まれてる物はないらしいが、とにかくグチャグチャに荒らされているらしい。

あれ、せっちん(神条さんのあだ名)怪我増えてない・・・?



そして・・・せっちんは用事があるらしく一人で下校中―――

そう言えば「用事がある」ってせっちんが一人で学校に残った翌日、決まって怪我をして登校している・・・
これは嫌な予感がするぞ・・・!










どこに居るんだ・・・くそっ、屋上で最後だ・・・




居た!!




どういう事だよ!




だ、誰だ!?






えええええええ。



おっさん番長日記 14

な・・・なんだ、あれ・・・人間じゃない・・・?


な、なんだってー!






そう、俺が今まで倒してきた番長はこいつの駒に過ぎなかったのだ。
本当に極東線沿線を守ってきたのは俺ではなく、せっちんだった・・・



だがその駒を全て倒した事により、とうとうこいつが姿を現せたという事だ。




うわあ、漫画とかでよくある異空間に飛ばされたぜ!どういう仕組み?




せっちんが魔法のようなファンタジックな手段で攻撃するも




魔物には通じず返り討ちにあう・・・



何か・・・何か俺に出来る事はないのか・・・!?



『ほんの一瞬だけど、ヤツの霊体が精神体に戻る時があるんだ・・・ そこを狙って、あたしの全力を叩き込めば・・・ だけど・・・それはすぐには無理だ。
力を貯める時間が必要でね。 だから少しでいい、ヤツの・・・魔物の注意を引いていて欲しいんだ』


わ、わかった、あれだな、地球上の元気を集めて玉にする技だな!!
という事は俺はブウ戦のべジータのポジションか!!まかせとけ!!




どっちかと言うとミスターサタンポジションっぽい。



おっさん番長日記 15


1分間オレがなんとかヤツをくいとどめる・・・ きさまはさっさと気を溜めろ・・・!!



だが魔物には番長たちとの戦いで得た技は通じず・・・







万事休すかと思われたその時・・・





『ほざけ・・・人間がぁ・・・!!』



『バ・・・バカな・・・何故・・・お前にこんな力が・・・』









魔物は・・・倒したのか・・・?



幼い頃から持っていたその特殊な力に目をつけた政府により両親がさらわれ、 無事に返す事を条件に魔物と戦う事を強要されていたらしい。

これまでいくつもの学校で戦ってきて何の思い出も作れなかった・・・






・・・・・・・・・






そして・・・











え、専門学校とか通わず直でオープンなんですか?


ちらっと出てきただけ。今頃名前判明・・・


お大事に・・・


なんだ卓男お前勝ち組じゃねえか!!


牧原さんと一緒にお菓子屋をやるそうだ。よかったな!




こうして俺の高校3年間は幕を閉じた。

今思えば喧嘩ばかりしてた気がするなあ・・・

振り返ると充実した高校生活を送れたと思う。

結局俺はフリーターになった。

人生、自分を見つめ直す時間も必要だよな。







!!?



そう、僕の中では休み毎にデートを繰り返すという事は即ち付き合っていると思っていたのだが、 どうやら世間一般ではそうではないらしい・・・

「俺たち付き合ってるよね」と何気なく聞いた時の、せっちんのあの「ハァ?」という顔は今でも忘れられない・・・

思わせぶりな態度取りやがって、このクソビッチが・・・!!


おっさん番長日記 おわり


私立もえぎの高校卒業後……







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