巨大プリン

最終話
 




崩れました。



崩れた、失敗したからと言っても、本番はここから。
食べるのが本番なのだ。
つまりはきちんと完食すれば成功とも言えない事もないのだ。
だから一度くらいの失敗でくよくよせずに頑張って食べていこうぜ!

という気持ちに切り替えようと思ったのだが、プリンが崩れた事による暗い気持ちを拭い去るこは出来ずに居る僕ら。



ふと視線を落とすと粉粒チョコレートやマンゴーなどが目に入り



「トッピングすれば綺麗に見えるかもしれない!」と思った僕らは早速粉粒チョコレートの封を破り、プリンの上に 撒き散らした。












どう見てもプリンの上で蟻が死んでるようにしか見えなくて落ち込む。




しかし今のは茶色いだけの粒チョコだったけど、今度のは色取り取りの色彩豊かな粒チョコレートだ。
これをかける事によって色鮮やかなデザートに仕上がる事間違いなし!


そんな期待を込めて撒き散らしてみたのだが、結果は死んでる蟻の量が増えただけであった。







いやいや諦めるにはまだ早い。
僕らにはまだマンゴーが残されている。

南国の太陽が育んだ濃厚で香り豊かなトロピカルフルーツ・マンゴーがプリンに花を添えてくれるはず。



「さあ、T君。皮剥いて」
「え?手で?包丁は?」
「取りに行くのが、ほら、面倒くさいから」
「わかった、手で剥くよ」




マンゴーに爪を立てるT君。



僕の予想では、ブドウの皮を剥くようにペリペリペリーって綺麗に剥がれると思ってたのだが、 実際は爪を立てた瞬間グジュッ!という音と共に南国汁がビシュッ!と飛び出て僕の部屋を汚したので


「マンゴーはもういいよ・・・」


と南国トロピカルフルーツをトッピングする事は諦めた。




粒チョコもかけたし、マンゴーは使えなかった。
これでトッピングは費えた。

つまりは巨大プリンが完成してしまったという事だ。

こんな状態を完成品と呼ぶのはどうかなーと思うのだが、トッピングが費えた以上、もう手の施しようがないので これで完成とする。




とりあえず、いただきます。



「うん、甘いけど美味しいよ」

「よく冷えてるね、固まりはしなかったけどね」

等と談笑しながら一皿・二皿と平らげていき、そして三皿目。


「甘い、もう欲しくない」という思いが僕らの頭の中を駆け巡りだしたので 「これはいかん!」と思った僕は



マリオカートの対戦で負けたやつが一皿一気食いな!」という、 強制的に食べざるを得ない地獄の提案をした。


二人ともファミコンと同年代くらいなだけあって、生まれた時よりゲームっ子みたいな感じで育ち、 さらにはオタクなので他の人よりもゲームに触れる時間が長かった事もあり、 お互い「腕に覚えあり!!」みたいな感じでマリオカート対戦は始まった。




まず一戦目は僕の勝利に終わった。




「よっしゃー!どっかんぼむへい〜!(ゲーム名)」という意味がよくわからない 雄叫びを上げ、勝どきをあげる僕。







物凄く渋々と言った様子でプリンを皿に盛るT君。





「20秒で食いきる事な!」という追加ルールを突然発表し、T君を苦しめる僕。

なんとか20秒で食べ終える事が出来、2戦目に突入したのだった。



そして、まあ、何度か対戦を重ねたのだが、トータルで見るとT君の圧勝。

つまりは僕の惨敗にほかならなくて、戦績はT君が3回一気食い。僕は5回一気食いという結果に終わった。



T君を苦しめるつもりで提案した「20秒ルール」がよもや自分の首を絞める事になろうとは思わなかった僕は、 度重なる連続一気食いのおかげで、ゲボが出そうになった。



しかしその甲斐あって、かなりの量のプリンを食べる事が出来た。

時間だけは余裕があるので、その後は煙草を吸ったりマリオカートをやったり(罰ゲーム無し) しながらゆっくりと食べる事にした。






少しずつ








ゲームの合間合間に食べる








そして1時間程して、ようやく最後の一口。


鍋の底のカスみたいなプリンをかき集め、スプーンに乗せ、口に持っていき、 口の中に入れる。


僕の胃と精神は最早限界に達していたのでなかなか飲み込む事が出来なかったのだが 早く終わりたい一心でゴクリと飲み込み、無事完食。


作る前は「プリンなんて簡単!完食余裕!」なんて思っていたが、 ここまで苦しむはめになるとは、まあちょっと考えればわかる事なんだけど、 僕らはバカだったので考えもしなかったわけで。


二度とプリンなんてやりたくねえなあという感想をこぼし、幕を閉じた。




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